DSM-Vにおける自閉症スペクトラム障害(Wingの意見)
DSM-5のドラフトにみられる改善点(自閉症について)は、2010年12月15日本ブログに掲載しました。同ドラフト(最初のもの)についてのウィングさんの意見です。現段階でDSM-5のHPにのっているドラフトは最初のものへの意見を検討し修正されて2011年1月26日に発表されたものです。これもまた意見募集され(締切済)修正されます。そして3回目の意見募集もされます。2013年には決定版が出る見通しです。ウィングさんのこれまでの見解、この論文での指摘、それに関してのDSM-5ドラフトの修正、についてもまとめてみました。
Autism spectrum disorders in the DSM-V: Better or worse than the DSM-IV?
Wing L, et al. Reseach in Developmental Disabilities, 32: 768-773,2011
要約:DSM-V委員会は最近、自閉症スペクトラム障害への診断基準草案を公表した。我々はこれらの基準を詳細に検討する。DSM-5委員会が見落としている大切な問題には、社会的想像力(を基準に入れていないこと)、幼児期と成年期における診断(に対応していないこと)、新マニュアルのもとでは自閉症をもつ女児や女性は認識されなかったり誤診され続けるであろう可能性が含まれる。我々はDSM-5基準が実践や研究において信頼され妥当性を持って使われるためには、かなりの変更が必要であると結論する。
まとめ
項目番号 |
Wingのこれまでの見解 |
Wingの今回の指摘 |
DSM-5ドラフトの修正 (当初からの特色) |
2 |
(社会的)イマジネーションの障害を診断基準に入れるべきである。 |
特に変更なし。 | |
3 |
感覚過敏・鈍麻を必須診断基準に入れるべき。 |
Bの4に独立して記載。 | |
4 |
下位基準が具体性に欠ける。 |
ある程度修正。 | |
4 |
社会的相互作用の障害は出生時から存在する。“社会的要求が本人のキャパシティーを超えるまで表面化しないことがある”は削除するか、“一般の人には気づかれない”とすべき。成人の特徴に専門家は精通すべき。 |
特に変更なし。 | |
4.1 |
社会との軋轢がある場合のみ診断が必要。 |
早期診断・早期介入が言われており、幼少時の詳しい基準が必要。 |
アイコンタクトの異常を追加 |
5 |
女性の特徴を検討すべき。 |
特に変更なし。 | |
6 |
サブグループ間の境界はない。年齢による変遷。 |
統一概念化は評価するが、サブグループの説明を入れるべき。 |
特に変更なし。 (統一概念化) |
6 |
定型発達者との境界もない。 |
(外来受診者においては定型発達者と区別できるとしながら“質的に”を削除) | |
7 |
各個人のニーズに関連するドメインリストがあるべき。 |
特に変更なし。 | |
社会との軋轢がある場合のみ診断が必要。 |
“D.日常的機能が制限される”を追加。 |
(N.I.)
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