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2011年1月

2011年1月 9日 (日)

名探偵モンクが教えてくれること②診断や専門性は必要か?

自閉症の名探偵モンクさんは、設定では強迫性障害ということになっています。ドラマのストーリーの中では診断名が問題になることはないようですが、とりたてて問題にしないことで以下の二つが浮き彫りにされています。

  1. 周りの理解と支援さえあれば、診断名は無関係/理解と支援が得られれば診断は不要。
  2. 診断や治療に関する専門家の見解が、実は非常に不確かなものであること。

私どもも、就労支援のための公的サービスを受けるための診断書などを出すことがあります。本人にとってプラスとなる支援が可能になったり、ためになる経験を本人がすることができるようになる場合だけ、診断を行うようにしています。

診断や治療に関するこれまでの歴史の中では、発達障害の専門家と呼ばれる人々がひどい間違いをたくさんしてきました。最近でも、劇的に有効な注射薬があると大騒ぎしてみたり、脳外科手術の効果を盲信したり、高機能と低機能は別の状態であると主張したりした中心人物は全部発達障害の専門家です(自称を含む)。専門的スタンスの重要性があるとすれば、実践的な環境作りや支援のための適切な評価や、ケースバイケースの状況に柔軟に対応して支援の道筋を試行錯誤するノウハウなどに専門性が極められるべきと考えます。

モンクさんの場合も、診断名はカウンセリングを健康保険で受けるためだけにあるような設定です。カウンセリング用の診断名は誤診であっても、本人がカウンセラーの先生から得るものがあればかまわないという流れがあります。モンクさんの周囲の人々は、適切な助言法や対応法を自然に獲得して実行しており、モンクさんと共に生きている人々がモンクさんに関する一番効果的で適切な専門家になっています。

Monk03_2 NHK BS2

(S.I.)

名探偵モンクが教えてくれること③治療の必要はないこと

名探偵モンクは治療の必要性が実はないんだということを教えてくれます。特に日本では、おちこんだり、眠れなかったり、パニックになったり、固まったり、大声をだしたり、情動行動や感覚過敏がひどかったり、勘違いがはげしかったりすると、薬が処方されることが多いのは皆さんご存じのとおりです。何種類もの薬が通常の量処方されて、説明された効果は何もなく副作用だけがでてしまっているケースが後を絶ちません。発達の偏りがある子供も成人も薬物に対して過敏であることが多いことを知っている専門家は実は非常に少ないのです。

モンクさんは、長期間自信を喪失したり、一晩中起きていたり、裁判で固まって変な声を連発したり、妄想が激しかったりしても、そのたびに、周りの人が理解してくれて、環境を整え、適切な配慮や助言をしてくれるので、内服薬をのむことなく、それぞれの難関を切り抜けて事件を解決していきます。本人が良質な経験を増やすためになる治療は許される可能性がありますが、実はそれ以外のものは、害にこそなれ何の役にもたっていないことが多いのです。

Monk02 NHK BS2

(S.I.)

2011年1月 3日 (月)

名探偵モンクが教えてくれること①共に生きる

名探偵モンクを見たことありますか?実に面白く、心温まる番組です。それは、「共に生きる」社会の理想像がそこに描かれているからです。

Monk_2 NHK BS2

強迫性障害の探偵さんという設定ですが、間違いなく自閉症のモンクさん。

自閉症だからこそモンクさんは、誰も気づかないことに気づいたり、誰もが見逃すものを見つけたりして、天才的に明快に事件を解決していきます。警部さんは、そんなモンクさんの名探偵ぶりを尊敬していて、事件解決は全くモンクさん頼みと言っていいほどです。

心温まるのは、周囲の警部さんたちやいつも一緒にいて支援してくれるアシスタントの女性が、モンクさんのこだわりや苦手なところをそのまま尊重してモンクさんが落ち着くとおりにしたり、時には本人のために励ましたりしているところ(メンター的役割)です。だからこそ、モンクさんは、特別な能力を存分に発揮できるのです。

周囲の人々の愛情はモンクさんをトラウマからも解放してくれています。また、モンクさんの純粋なままの人間性に接するうちに、周囲の人たちも人間の本質に気づき、本当に大切なものがわかっていき、成長していきます。

警部さんが、モンクさんのことを「何かが足りないと思っていたがそうではなかった、あまりにも人間らしすぎるんだ!」と言っていますが、自閉症者のことをとてもよく表してくれているセリフとして胸に響きました。

モンクさんとモンクさんを囲む人々との関係が社会に広まっていけば、共に生きる社会の実現は近いと思います。

(N.I.)