2013年7月31日 (水)

DSM‐5における改善点(自閉症について)

DSM-5が、2013年5月22日、出版の形で発表されました。

自閉症に関しては、ドラフトのときから、かなり改善されていましたので、DSM-5 のドラフトにみられる改善点として、2012年12月に本ブログで紹介してあります。その4つの改善点は、そのままでしたので、ほっとしています。

改善点1:単一遺伝子疾患であることが判明したRett's Disorderをはずしたこと。

改善点2:他の4つのサブタイプ(自閉性障害、小児崩壊性障害、アスペルガー障害、PDDNOS)の診断名がなくなり、自閉症スペクトラム障害として、統一したこと。

改善点3:社会的要求が(本人の)制限されたキャパシティを超えるまでは表面化しないかもしれない。と付記したこと。

改善点4:DSM-IV-TRまでは,社会的な相互作用とコミュニケーションに関する項目の両方に質的な(qualitative)障害があると記載されていましたが,社会性とコミュニケーションの項目を社会的コミュニケーションにまとめたことに加え,この質的という言葉が消えたこと。

また2回目ドラフト(2011年1月26日)での改善点は、

改善点5:感覚過敏などの感覚インプットの問題をこだわりの中ではあるが、明記したこと。

そして、今回の決定での新しい改善点は、

改善点6: 改善点3の後に、あるいは、のちの人生で獲得した戦略によってマスクされているかもしれない。という表現が追加されたこと。です。

質的ではなく、量的なものであること、一般集団につながるスペクトラムであること(崩壊する子どもなどいなくて、単に退行現象を見ていたことへの気づきも含む)の考え方が、明記されてはいませんが、根底にあると思え、そうであるならば、私共の考え方と一致します。また、社会的要求の圧力で大人になって表面化したり、獲得した戦略(スキル)により、ずーっと気づかれないままであったり、なおったと勘違いされることがあることに気づいてくれています。

その他、本人が困らなければ診断されないという立場をとり、サポートの必要度で、レベル1から3をつけるようになっています。

また、DSM-5からどうやら軸が消えたようです。

(N.I.)

2013年1月23日 (水)

分離教育からインクルーシブ教育へ画期的転換

文科省が、インクルージョンの意味をやっと正確に理解してくれたことは、2010年末に紹介しました。やっとではありますが、本気で、分離教育から、共に学ぶインクルーシブ教育への転換を実行してくださるようですので、大いに期待したいと思います。

平成24年7月23日、文部科学省初等中等教育分科会は、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」をネット上に発表しました。

以下に、画期的な点を紹介します。

・共生社会の形成のために、障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念が重要としていること。

・インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追及するとともに、個別の教育的ニーズに応える。これはすべての子どもにとっても、良い効果をもたらすとしていること。

・(「多様な学びの場」の一部として、特別支援学級、特別支援学校を残してはいますが、)就学先決定については、障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の仕組みを改めるとし、本人・保護者の意見を最大限尊重するとしていること。

・障害のある子どもが十分に教育を受けられるための「合理的配慮」の否定は、障害者の権利に関する条約において、障害を理由とする差別に含まれると明示していること。

・「合理的配慮」の充実のための「基礎的環境整備」のために財源を確保するとしていること。

・多様な子どものニーズに的確に応えるために、学校全体で対応することはもちろん、特別支援教育支援員の充実、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、ST(言語療法士)、OT(作業療法士)、PT(理学療法士)等を活用したり、必要に応じて医療的ケアの観点から看護師等を確保するとしていること。

・すべての教員は、特別支援教育に関する一定の知識・技能を有する必要があり、特に発達障害に関する一定の知識・技能は、発達障害の可能性のある児童生徒が通常の学級に在籍していることから必須であるとしていること。

・学校自体が「共生社会」となるよう、教職員に障害がある者を採用するとしていること。

(文科省を動かすに至る地道な努力をしてこられた関係各位と国連に感謝申し上げます。)

(N.I.)

2013年1月20日 (日)

自閉症の力

Nature 2011年11月3日号は、‘自閉症の謎’という神経科学の特別号でした。その中に、‘自閉症の力’というLaurent Mottoronの素晴らしいコメントが載っていましたので、紹介します。

最近のデータ (と個人的経験)は、科学を含む特定の分野で、自閉症であることが強みであり得ることを示す(The power of autism.Nature 479:33-35,2011)

このコメントでMottoronは、以下の点を指摘しています。

・自分の研究グループのスタッフに8人の普通の自閉症者がいて、日々の研究に貢献している(Mottoronは、彼らの貢献が自閉症にもかかわらずではなく、自閉症だからこそと評価しています)。

・その中の自閉症女性Michelle Dawsonは、7年前からMottoronの共同研究者であり、多くの論文を共著してる。Mottoronらは、彼女から教えられ自閉症に関するこれまでの仮説やアプローチ法に疑問を持つようになった。これらの疑問には、ネガティブな特徴で定義され、多くの優れている点が診断基準に含まれていないこと、自閉症のための教育プログラムが自閉症的行動を矯正し定型発達に無理に近づけようとしていること、自閉症式のコミュニケーションスタイルを無視していること、MRIでの脳活動の特徴を欠陥であると一方的に判断していること、知能の評価を自閉症者が得意とする課題(Ravenマトリックステストなど)ではなく定型発達の人が得意とする言語性検査で行うことに何の疑問も感じていないこと、などである。

・多くの自閉症者は、学術的科学に適している。子どもの頃から彼らは数や文字や数学や幾何学パターンのような情報や構造に興味を持っている。これは科学的思考の基礎である。彼らの極端な興味の集中は、彼らが科学的トピックスにおける独学の達人となることを助ける。

・自閉症者は、大量の感覚的情報を同時に処理することができる。例えば膨大なデータの処理では非自閉症者よりも優れている。自閉症者は記憶力に優れているし、データを誤って記憶することはあまりない。Dawsonの鋭い視点は、科学はデータを最重要視すべきと我々に教える。彼女(自閉症者)は、細部から全体を組み立てる思考ルールを持っており、正確なモデルを考えるに至る。

・自閉症者は治療よりも機会や支援を必要としている。自閉症が人類に含まれる一つの特異タイプとして記載され研究されるべきである。十分に啓発された社会の指標は、少数派の行動や形質のインクルージョンである。科学者もまた、自閉症の欠損を単純に研究する以上のことをすべきで、自閉症の能力と強みに目を向けるべきである。

(N.I.)

2011年8月21日 (日)

DSM-Vにおける自閉症スペクトラム障害(Wingの意見)

DSM-5のドラフトにみられる改善点(自閉症について)は、2010年12月15日本ブログに掲載しました。同ドラフト(最初のもの)についてのウィングさんの意見です。現段階でDSM-5のHPにのっているドラフトは最初のものへの意見を検討し修正されて2011年1月26日に発表されたものです。これもまた意見募集され(締切済)修正されます。そして3回目の意見募集もされます。2013年には決定版が出る見通しです。ウィングさんのこれまでの見解、この論文での指摘、それに関してのDSM-5ドラフトの修正、についてもまとめてみました。

Autism spectrum disorders in the DSM-V: Better or worse than the DSM-IV?

Wing L, et al. Reseach in Developmental Disabilities, 32: 768-773,2011

要約:DSM-V委員会は最近、自閉症スペクトラム障害への診断基準草案を公表した。我々はこれらの基準を詳細に検討する。DSM-5委員会が見落としている大切な問題には、社会的想像力(を基準に入れていないこと)、幼児期と成年期における診断(に対応していないこと)、新マニュアルのもとでは自閉症をもつ女児や女性は認識されなかったり誤診され続けるであろう可能性が含まれる。我々はDSM-5基準が実践や研究において信頼され妥当性を持って使われるためには、かなりの変更が必要であると結論する。

まとめ

項目番号

Wingのこれまでの見解

Wingの今回の指摘

DSM-5ドラフトの修正

(当初からの特色)

2

(社会的)イマジネーションの障害を診断基準に入れるべきである。

特に変更なし。

3

感覚過敏・鈍麻を必須診断基準に入れるべき。

B4に独立して記載。

4

下位基準が具体性に欠ける。

ある程度修正。

4

社会的相互作用の障害は出生時から存在する。“社会的要求が本人のキャパシティーを超えるまで表面化しないことがある”は削除するか、“一般の人には気づかれない”とすべき。成人の特徴に専門家は精通すべき。

特に変更なし。

4.1

社会との軋轢がある場合のみ診断が必要。

早期診断・早期介入が言われており、幼少時の詳しい基準が必要。

アイコンタクトの異常を追加

5

女性の特徴を検討すべき。

特に変更なし。

6

サブグループ間の境界はない。年齢による変遷。

統一概念化は評価するが、サブグループの説明を入れるべき。

特に変更なし。

(統一概念化)

6

定型発達者との境界もない。

(外来受診者においては定型発達者と区別できるとしながら“質的に”を削除)

7

各個人のニーズに関連するドメインリストがあるべき。

特に変更なし。

社会との軋轢がある場合のみ診断が必要。

D.日常的機能が制限される”を追加。

(N.I.)

2011年5月25日 (水)

利他のすすめ チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵  大山泰弘著

帯にー知的障害者に導かれて、「日本でいちばん大切にしたい会社」をつくった経営者の心温まるメッセージ。ーとあります。

知的障害者雇用に尽力されてきた、あのチョーク工場(社員の七割以上が知的障害者であり、業界トップシェア。障害者に健常者と同じ賃金を払っています)の社長さんの書かれた本であり、生き方に感銘を受けました。こんな社長さんが増えることを願ってやみません。

お釈迦様の知恵。で始まります。お釈迦さまは、修行につまづいていた周利槃特に「お前にはお前の道がある」と「塵を払わん、垢を除かん」という言葉と箒を与えました。それから一心に掃除をする姿が尊く、手を合わせたくなるほどであった彼を「無言の説法」ができる者としてお釈迦さまは修行最高段階の十六羅漢の一人に選んだのでした―という話で始まります。社長さんは自分自身が周利槃特に手を合わせて生きてきたようなものだとおっしゃています。 知的障害者は時代や社会の影響を受けない、移ろいやすい世の中の「定点」のような存在とおっしゃっているのに感銘を受けました。従業員の知的障害者の中に自閉症を持つ方たちがいらっしゃることは描写からうかがえます。             

1959年、時代の価値観に浸り知的障害者に偏見さえ持っていたという社長さん、熱心な養護学校の先生から三度頼まれ、二人の知的障害を持つ少女を二週間の就業体験のつもりで引き受けました。無心で単調な仕事をし、「ありがとう」の言葉に心から嬉しそうな笑顔をする少女たち。最終日には、社員たちによる、「私たちが面倒をみるからあの子たちを雇ってあげてください。」との申し出。と初めは受け身的な出会いでしたが、何か導かれているようだったとのこと。社長さんは、知的障害を持つ少女たちからの「無言の説法」に気づいたのです。        

決意した社長さんは、知的障害者と本気で向き合うようになり、知的障害者を主力とする会社をつくろうと強い意志を持って歩き始めました。そう決意したとき、道は開けたと私は思います。本気で向き合うこと、それは愛だと思います。

知的障害者が理解しやすいように、彼らの目線に立ってさまざまな工夫を考えました。健常者の社員にいつも話しました。「うまくいかないことがあっても、知的障害者のせいにすることはできないんだよ。彼らの理解力に合わせて、彼らがうまくできるように工夫するのが君の仕事なんだ」と。本気で思い、工夫するーこうして、知的障害者が主体的に働ける製造工程も、社員間の信頼関係も築いてゆきました。

社会の偏見、無理解とも戦ってこられた様は、愛する家族を守る父親のように見えます。社長さんの姿勢に感服する外部からの協力要請や支援などを得て、ホタテ貝殻入りチョークや粉の出ないチョークも開発できました。  

知的障害者に教えられ、人のために生きてこそ人は幸せになれるという生き方をしてこられた社長さん。会社は人を幸せにする場所であるーと、企業こそ利益第一主義でなく、幸福の意味である「福祉」を追及するべきだと、福祉主義を提案し、広がらない障害者雇用の現実がどうにかならないかと具体的に提案してくださっています。(本当は社長さんのように本気で取り組んでくださる社長さんが増えることで社会は変わっていくと思います。また、「共に学ぶ」インクルージョン教育はそれを促進するでしょう。) 

(N.I.)

2011年2月23日 (水)

定型発達症候群:健常者をラべリングする

私どもは、自閉症の概念が単なるラべリングであることを主張しておりますが、さらに一歩進めて、定型発達者をラべリングして症候群にした論文を見つけました。自閉症者を自閉症と診断することと、定型発達者を定型発達障害と診断することの間に本質的な差がないことに気づかされます。自閉症の診断基準の文章を一部そのまま使用しており、方向性が違うだけであることを強調しています。

Charlotte Browlow.   Re-presenting Autism: The Construction of 'NT Syndrome'  

J Med Humanit (2010) 31:243-255.

(皮肉たっぷりに記載された、定型発達障害の診断基準)

定型発達病の診断マニュアル(DSN-IV)コード番号666.00:定型発達障害

幼児期あるいは子供時代に始まる発達障害の重症型。必須の特徴は、

A.   社会的相互関係における非依存性の質的障害

  例) 苦悩時に、極端に、あるいは異常なまでに慰めを求める

B.  言葉あるいは言葉によらないコミュニケーションと想像遊びにおける質的障害

  例) 露骨に過度なコミュニケーションの全ての方法の使用、コミュニケーションのための喃語、顔の表情、ジェスチャー、真似、話し言葉など。過度に空想的で無意義な活動、大人役、ファンタジーキャラクター、動物などのごっこ遊びなど。コンピューターや他の論理的に遂行する遊びへの興味の欠如。

C.  著しく制限された活動と興味のレパートリー 

  例) 感知の持続的欠如、あるいは物体の部分に気づく能力がない。通常でない物への愛着(例えば、BMWの車、ローレックスの腕時計、携帯電話、ブリーフケースへのこだわり)。不合理な、他人への正確な細部の同一性の保持、例えば、買い物の時、正確に同じ社会的行動がいつも返されることにこだわる。

D.  幼児期あるいは子供時代に始まる

(N.I.)

2011年2月18日 (金)

SSRIは自閉症スペクトラムに効果なし(コクラン レヴュー)

(最も信頼できる厳密なエビデンス評価機関であるCochrane レヴューからの論文です。自閉症にSSRIが効くエビデンスはこれまでのところないという結論です。)

Williams K et al. Selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs) for autism spectrum disorders (ASD). Cochrane Database Syst Rev 2010 Aug 4;(8):CD004677.

(背景)SSRIは、自閉症スペクトラムに関連して起こってくる、うつや不安、強迫行動等の治療のために使われている。

(目的)SSRIは、1.自閉症の中心的特徴を改善するか 2.自傷行為などを改善するか 3.本人や保護者の生活の質を改善するか 4.結果的に短期間、長期間の効果があるか 5.害を起こさないか を決めることを目的とした。

(結論)自閉症スペクトラムの子供たちにSSRIsの効果のエビデンス(証拠)はない、そして、むしろ、副作用のエビデンスがみられる。成人に対する効果のエビデンスは制限されている。

(N.I.)

2011年2月 7日 (月)

就労支援のための診断書様式の変更(精神障害者保健福祉手帳)

 (Nさんからきっかけの情報いただきましたhappy01

“共に生きる社会”を実現するための唯一のそして最もお金のかからない方法は、“共に学ぶ学校”を実現することです。しかし、なかなか変わらない分離社会の中で、相変わらず国も苦労しているようです。

そんな中で、有効利用できそうなのがこの話題です。手帳が無くても就労支援の一部は受けられますが、手帳を持っていなければ利用できないものもあります(障害者雇用率のシステム)。障害者雇用率のシステムの恩恵を得ることができたのが、身体障害者手帳を持っている人にかなり限定されていたのは、主に企業側の都合によるのですが、障害者雇用率の計算式の対象には精神障害者保健福祉手帳所持者が実は数年前に入っています(平成18年)。この時、療育手帳をもらえない自閉症者も雇用率にカウントできるようにしようと厚労省が動いたわけです。ところが、精神障害者保健福祉手帳の申請のための診断書に発達の偏りに関する記載項目がなかったので、手続き上の混乱が生じました。そこで、やっと昨年(平成22年)12月に厚労省が変更のための通達を出しました。これで診断書の中に自閉症者の特徴に関する項目が設けられることになります。

療育手帳を申請しなかった、申請してももらえなかった(高IQの場合)、あるいは療育手帳のAをもらえなかった自閉症者は、精神障害者保健福祉手帳を持たなければ、障害者雇用率システムなどの恩恵を受けることはできないのですが、この診断書の変更で精神障害者保健福祉手帳の申請がかなりスムーズにできるようになります。選択肢が増えたという意味では改善と考えることができます。

また、新様式には、学習障害や高次脳機能障害に対する配慮もみられ、学習の困難、遂行機能障害、注意障害などの項目も追加されます(施行は平成23年4月の予定)。

手帳を取得するかどうかは、メリット、デメリットがあるため、当事者たちの考え方で自由ですが、人生において必要性を感じる時もあるでしょうから、公的サービスの幅を広げる精神障害者保健福祉手帳というオプションがあることを発達障害者の方、御家族、支援者は、知っておられたら良いと思います。

(S.I. & N.I.)

2011年1月 9日 (日)

名探偵モンクが教えてくれること②診断や専門性は必要か?

自閉症の名探偵モンクさんは、設定では強迫性障害ということになっています。ドラマのストーリーの中では診断名が問題になることはないようですが、とりたてて問題にしないことで以下の二つが浮き彫りにされています。

  1. 周りの理解と支援さえあれば、診断名は無関係/理解と支援が得られれば診断は不要。
  2. 診断や治療に関する専門家の見解が、実は非常に不確かなものであること。

私どもも、就労支援のための公的サービスを受けるための診断書などを出すことがあります。本人にとってプラスとなる支援が可能になったり、ためになる経験を本人がすることができるようになる場合だけ、診断を行うようにしています。

診断や治療に関するこれまでの歴史の中では、発達障害の専門家と呼ばれる人々がひどい間違いをたくさんしてきました。最近でも、劇的に有効な注射薬があると大騒ぎしてみたり、脳外科手術の効果を盲信したり、高機能と低機能は別の状態であると主張したりした中心人物は全部発達障害の専門家です(自称を含む)。専門的スタンスの重要性があるとすれば、実践的な環境作りや支援のための適切な評価や、ケースバイケースの状況に柔軟に対応して支援の道筋を試行錯誤するノウハウなどに専門性が極められるべきと考えます。

モンクさんの場合も、診断名はカウンセリングを健康保険で受けるためだけにあるような設定です。カウンセリング用の診断名は誤診であっても、本人がカウンセラーの先生から得るものがあればかまわないという流れがあります。モンクさんの周囲の人々は、適切な助言法や対応法を自然に獲得して実行しており、モンクさんと共に生きている人々がモンクさんに関する一番効果的で適切な専門家になっています。

Monk03_2 NHK BS2

(S.I.)

名探偵モンクが教えてくれること③治療の必要はないこと

名探偵モンクは治療の必要性が実はないんだということを教えてくれます。特に日本では、おちこんだり、眠れなかったり、パニックになったり、固まったり、大声をだしたり、情動行動や感覚過敏がひどかったり、勘違いがはげしかったりすると、薬が処方されることが多いのは皆さんご存じのとおりです。何種類もの薬が通常の量処方されて、説明された効果は何もなく副作用だけがでてしまっているケースが後を絶ちません。発達の偏りがある子供も成人も薬物に対して過敏であることが多いことを知っている専門家は実は非常に少ないのです。

モンクさんは、長期間自信を喪失したり、一晩中起きていたり、裁判で固まって変な声を連発したり、妄想が激しかったりしても、そのたびに、周りの人が理解してくれて、環境を整え、適切な配慮や助言をしてくれるので、内服薬をのむことなく、それぞれの難関を切り抜けて事件を解決していきます。本人が良質な経験を増やすためになる治療は許される可能性がありますが、実はそれ以外のものは、害にこそなれ何の役にもたっていないことが多いのです。

Monk02 NHK BS2

(S.I.)