文科省がインクルージョンの意味をやっと理解!?
「共に学ぶことのみが,共に生きる社会を実現する」(じゃじゃ丸トンネル迷路)
2010年年末になって、ビッグニュースです。これまで分離教育に固執してインクルージョンの意味を曲解していた文科省から,画期的文書が出されており,最初はとても信じられませんでした。
この文書については,12月27日に文科省からパブリックコメントが募集されています。タイトルは,「中央教育審議会初等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会論点整理に関する意見募集の実施について」です(当該文書へのリンクがあります)。意見の受付締め切りが2011年1月23日ですので,インクルージョンの正しい意味を認めた点について文科省を是非ほめてあげて下さい。
これまでの文科省は,平成17年(2005年)12月に同じく中央教育審議会から出された答申にありますように,インクルージョン・ノーマライゼーション・サラマンカ宣言のことを引用しているにもかかわらず,インクルージョンやノーマライゼーションをその意味があたかも「分離したまま障害者を頑張らせること」であるかのように紹介し,「ひとりひとりに必要なニーズは普通クラスで供給されるべき」としているサラマンカ宣言の理念を完全に無視してきたわけです。
ところが,今回の文書には,「インクルーシブ教育システム(包容する教育制度)の理念とそれに向かっていく方向性に賛成」とし,「インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求する」と記載されており,インクルーシブ教育の理念が同じ場で共に学ぶことであることをやっと認めてくれています。さらに,「障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶことは、共生社会の形成に向けて望ましいと考えられる。同じ社会に生きる人間として、お互いを正しく理解し、共に助け合い、支え合って生きていくことの大切さを学ぶなど、個人の価値を尊重する態度や自他の敬愛と協力を重んずる態度を養うことが期待できる」とまで言及しており,初めてじゃじゃ丸トンネル迷路と意見が一致しました。
他にも背景があるようですが,この変化の一因は,「障害者の権利に関する条約」であるようです。繰り返しになりますが,分離ではなくインクルージョンを理想とする1994年のサラマンカ宣言の理念は,日本ではただの宣言としてみごとに無視されてきたわけです。ところが,2006年に採択され,2007年に日本が署名し,現在批准に向けての検討がなされている「障害者の権利に関する条約(国連)」の第24条に,「(初等教育から高等教育までの)全てのレベルでのインクルーシブ教育システムを締約国は確保する」ことが明記されているのです。これは宣言ではなく,条約ですので,批准するつもりであれば,何らかのモーションが必要になってくるわけです。
段階的な移行の必要性を付記してある点や,連続性のある「多様な学びの場」の一つとして分離教育の選択肢を残している点など,いろいろな議論があったことがうかがわれますが,とにかく,インクルージョンの意味を理解してくれただけでも格段の進歩と言えます。
(S.I.)
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