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2010年12月15日 (水)

DSM-5のドラフトにみられる改善点(自閉症について)

診断や治療に関する専門家の見解が,実は非常に不確かなものであることは,これまでの歴史が証明しています.特に精神的状態や発達状態の診断基準は,単にその時の多数派の平均的見解であって,その背景にあるのは単なるラベリングに過ぎません(文献1).米国精神医学会の平均的見解が少し改善されつつありますのでご紹介します.最終的にどうなるかはわかりませんが,現在ドラフト(草案)の修正段階にあるDSM-5(文献2)には,自閉症に関して以下のような改善点がみられます.

改善点1:特定の遺伝子異常の効果サイズが非常に大きいことが知られている(文献3)Rett's Disorderを別なグループとしている点.

改善点2:小児崩壊性障害とアスペルガー障害とPDD-NOS(特定できないPDD)が診断名からなくなり,統一概念として自閉症スペクトラム障害としている点.

改善点3:必須項目の3の「症候は小児期の早期に存在していなければならない」という記載の後に括弧付けで,「しかし,(本人に対する)社会的な要求が,(本人の)制限されたキャパシティーを越えるまでは,十分に(症候が)表面化しないかもしれない」と付記されています.表面化するのが大学に入ってからだったり,就職してからだったりするケースがあることにやっと気がついたのかもしれません.

改善点4:DSM-IV-TRまでは,社会的な相互作用とコミュニケーションに関する項目の両方に質的な(qualitative)障害があると記載されていましたが,社会性とコミュニケーションの項目を社会的コミュニケーションにまとめたことに加え,この質的という言葉がドラフトからは消えております.量的な(quantitative)特質であることは,以前から指摘しておりますが(文献3),せめてこのまま質的という言葉を使わないままDSM-5が完成することを期待します.

(文献1) Ijichi S. et al. Are Aliens medically disordered? BMJ, eLetter, 2009.

(文献2) Disorders usually first diagnosed in infancy, childhood, or adolescence

(文献3) Ijichi S & Ijichi N. Minor form of trigonocephaly is an autistic skull shape?: a suggestion based on homeobox gene variants and MECP2 mutations. Medical Hypotheses 58: 337-339, 2002.

(S.I.)

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